2013年10月3日木曜日

再び心が燃え始める~挫折からアレクサンダーテクニークとの出会い~

僕は、自分のトロンボーン演奏と、トロンボーン&金管楽器のレッスン、吹奏楽での合奏指導にアレクサンダーテクニークを取り入れています。
今回は、僕のこれまでの音大卒業当時の話と、それからアレクサンダーテクニークとの出会い、これから目指すものについてお話させて頂きます。


《音大での挫折》
中学の頃からずっと夢見て入った音楽大学を卒業する時のこと、『もう音楽は続けられない、精神的にも肉体的にも完全にまいってしまった。』音楽を嫌いになりたくないけど、苦しい。楽器のことを考えるだけで胸が詰まったように息苦しくなって、吹けば背中と腰が痛く、練習の終わりや本番後にはひどい頭痛と肩こりがやってくる。自分にひどい嫌悪感を持っていて、音を出すことすら苦痛・・・練習もまともにできなくなり、卒業試験の演奏は散々なものでした。
昔は心からトロンボーンが好きだったのに、どうしてこうなってしまったんだろう。なにがいけなかったんだろう。音楽を辞めなら生きる価値を何に見いだせばいいんだろうか。
大学を卒業してから、一歩も前に歩み出せずに、そんなことを考える日々が続きました。

けれどいくら考えてもこれまでの自分の行いをただ責めるばかりで、答えは出ませんでした。
どうして、トロンボーンを演奏しようとすると、体が痛くなってしまうのか、心が苦しくなって不快になるのか当時は本当にわかりませんでした
そして自分にとって重要なのは、どうすればトロンボーンを続けていけるのか、でした。
このままでは心も体も根をあげて、音楽が嫌いになってしまう一歩手前だったのです。

 
《アレクサンダーテクニークとの出会い》
大学を卒業してから一年間、なんとかトロンボーンを続けれるよう試行錯誤を繰り返していました。姿勢や呼吸について色んな書籍を読んだりエクササイズを試したり、奏法についても改めて見直してみたり。しかしどれも根本的な解決には至らず、唯一卒業してから自分で企画して臨んだ演奏会でも、途中で音が全く出なくなってしまい、心が折れかけていました。
 
そんな時、たまたま東京藝術大学でアレクサンダーテクニークの講師をされているバジル・クリッツァーさんのブログを見つけました。そこには、今まで色んな情報に溢れて混乱していた金管楽器の奏法について、体の実際の構造に基づいた、とてもスッキリとして具体的なアイデア、自分の考えやメンタル的な部分が体の痛みと演奏に直接影響を与えているということなど興味深い内容ばかりが目に飛び込んできました。その日から、バジルさんのブログを読んでは、練習する。の繰り返しでした。

 
すると、練習し始めて数分の間、体の痛みがなくなって、呼吸が自由になり久しぶりに自分が吹きたいように吹けたんです!いったいこのアレクサンダーテクニークってなんなんだろう?もしかしたら、もう一度トロンボーンが吹けるかもしれない・・・!!音楽が好きになるかも!という希望が湧いてきました。
そして、このアレクサンダーテクニークというやつに賭けてみよう。これでダメだったら楽器はやめよう。
本当にわらにもすがる思いでした。
 
さっそく大阪梅田にあるBODYCHANCEというアレクサンダーテクニークのスタジオへ体験レッスンを受けにいきました。そこでは、自分の体について今まで間違った認識を持っていたことに気づかせてもらい、先生にサポートしてもらいながら、新しい意識で楽器を吹いてみると・・・すっと今まで聞いたことのないような、遠い昔に聞き覚えのあるような音が出てきました。自然に出てきた豊かで響きのある音・・・これが素直にでた僕の音なんだ・・・!
 
 
それから、しばらくして発表会に出ないかというお誘いがあり、ソロの演奏をすることになりました。
めちゃめちゃあがりまくったけど、レッスンで教わったことや、バジルさんのブログで読んだことで、そのときできそうなことをとにかく実践してみました。演奏はミスばっかりでぼろぼろ・・・だったかも知れない、けれど僕にとっては今までにない初めての体験でした。
それは何かというと、どれだけあがっても、ミスをしても、アレクサンダーテクニーク的なアプローチを使うことで、自分のやりたい音楽を最後まで意図し続けられたんです。いつもはあがりに対する恐怖心や、ミスしたときの動揺、人からの評価、ネガティブな思考が常に自分のやりたい音楽の邪魔をしていたけれど、このときはそれらに邪魔されず、本当に自分の音楽を最後まで考えることができました!!これはとても楽しく喜ばしい体験でした。そうだ、これが自分がやりたいこと!うん、トロンボーンを続けていきたい、続けていける!と確信しました。
再び心が燃え始めるのを感じました。

 
 
 
《教えること》
そんな素敵な体験をした後すぐ、母校の高校へレッスンに行ったとき、あるトランペットパートの生徒との出会いがありました。彼女は二年間、真剣に打ち込んだ吹奏楽部の最後の定期演奏会でソロパートを演奏するようでした。合奏練習でたまたま彼女のソロパートを聞いたのですが、緊張して音がまるで出ない。練習が終わってから彼女に少し声をかけました、小声で「すいません。すいません。」というばかり。それから高校に行くたびに彼女と話をするようになり、すこしずつ望みや悩みを話してくれました。「(部活の)みんなに
迷惑かけてる」「自分はへたくそだからソロなんて吹けない」とネガティブな話ばかり、けど幸いにも「吹けるようになりたい」「吹きたい」という意思が感じ取れました。自分と似てる、それなら役に立てるかも!
それから彼女の演奏を見て、話を聞いて、自分の経験とバジルさんのブログを頼りに少しずつアドバイスをしていくと、だんだん音が出てくるようになってきたんです。そして出てきた音はすごく綺麗な音!
そして音が出るようになるにつれて彼女の印象がどんどん変わっていきました、実際とても明るく好奇心旺盛な生徒だったんです。だんだん彼女のほうから、「これはどうやったら吹けますか?」「いつもこれがうまくいかないんですけど、どうすればいいですか?」ってとてもキラキラした目で聞いてくる。ついこの前までとは見違えるくらい楽器と部活を楽しんでいました。これまた僕にとって素敵な体験でした。
 
自分が今まで苦しんできた経験、そしてアレクサンダーテクニークを使ってそこから健全に自分の好きな音楽を楽しみ上手くなっていく過程が、誰かの役に立つのかもしれない・・・!
それって自分にとってなんて素晴らしいことなんだろうか!!
 

《音楽家のためのアレクサンダーテクニーク教師を目指す》
そんな経緯を経て、現在アレクサンダーテクニーク教師を目指しています!
アレクサンダーテクニークに魅力を感じるのは、
 
・アレクサンダーテクニークを使うことで、ネガティブな思考や評価に邪魔されず、本番で自分のやりたい音楽に集中し続けられること こころから音楽を楽しめること 
 
・自分自身の力で自分の可能性を引き出し、伸ばしていけること
 
・肯定的、前向きなエネルギーを源に上手くなっていけること
 
です。そしてその方法を伝えられる教師になりたいと思っています。
そしてプロアマ問わずパフォーマンスする全ての人々が、その才能を惜しみなく発揮できて、どこへ行っても個性溢れる豊かな音楽を楽しむことができる日本に、なればいいなあと、本気で夢見ています(!!)
 







森岡 尚之 / モリオカ ナオユキ トロンボーン&金管トレーナー/アレクサンダーテクニーク教師養成コース在籍
プロフィール
アレクサンダーテクニークとの出会い

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